執事 福田貴宏
前回の続きです。
衆生救済の行といっても、自分の行である比叡山での30㎞はかかさず行いますので、正確には衆生救済のための行が加わった、ということになります。よって6年目は比叡山のふもと、住所は京都市ですが赤山禅院(せきざんぜんいん)で加持祈祷をするため、その往復30㎞が加わり1日60kmを100日間行います。参拝箇所も266カ所となり、行者の足でも12時間、“赤山苦行”と呼ばれ厳しい行程となります。
最後の年となる7年目、残るは200日です。前半100日は、あの堂入りよりもキツイと言わしめる“京都大廻り”です。1日の歩く距離は約84km!何とマラソン2回分!参拝箇所は300カ所以上、歩く時間は17時間、1日の睡眠時間は3時間ほどです。京都大廻りは2日がかりとなりますが、その行程を簡単に紹介してゆきましょう。
【スタート】
午前1時に拠点である無動寺を出発、行者道を通って東塔、西塔、横川をまわり、午前7時に戻ってきて自行の30㎞が終了します。お勤めのあと朝食をとり、京都大廻りへ出発です。前年から行っている赤山禅院での祈祷後、京都の町へ入ってゆきます。真如堂、八坂神社などを経て清水寺あたりで昼食、六波羅蜜寺、北野天満宮、下鴨神社などを巡り、午後7時宿坊となる清浄華院に到着します。お勤め、入浴、明日の身支度等をして午後9時に就寝。夜の食事はありません。午前0時前には起き、お勤めをして午前1時に清浄華院を出発します。前日に歩いた道を逆にたどって参拝しながら比叡山に戻り、自行の30㎞を歩いて午後7時無動寺に帰ってきます。お勤め、入浴、明日の準備をして午後9時就寝。午前0時前に起きます。
【スタートに戻る】
となります。これを50回繰り返すと100日で京都大廻りは終了、残すはあと100日です。
さて、ラストはどんなメニューが待っているのかとおもいきや、自行の30kmだけに戻ります。しかも75日目をもって満行となります。「あと25日残っているから、一生お前は回峰行中の身だぞ」や「修行というものは完成することはない」という意味が込められているのだそうです。これでとにもかくにも苦行中の苦行を成し遂げ、満行となりました。めでたし、めでたし。って、これで終わりではありません。阿闍梨さまには最後に大事な仕事がありました。
ー次号に続く
前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)
昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。
執事 福田 貴宏
現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)
縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。
執事 堀 研心