執事 堀研心
前回からの続き
レオナルド・ダ・ビンチが設計に携わったといわれるシャンボール城の二重らせん階段は、会津、正宗寺三匝堂に影響を与えたかもしれない。小林文次博士の『あたかもライトのグッゲンハイム美術館を思わせるような』という言葉も気になります。
フランク・ロイド・ライトのグッゲンハイム美術館
ニューヨークの、ソロモン・R・グッゲンハイム美術館。炭鉱王、ソロモン・R・グッゲンハイムが蒐集した現代アートのコレクションを展示する美術館で、「かたつむりの殻」とも形容されるらせん状の構造で、中央部分が吹抜けになっている建物に特徴があります。らせん状・中央が吹抜け・美術館…この特徴は、羅漢寺のさざえ堂と同じです。グッゲンハイム美術館を設計したのは、近代建築の三大巨匠のひとり、フランク・ロイド・ライト(以下、ライト)という建築家です。
グッゲンハイム美術館は、ライトの傑作のひとつとして有名です。その一方で、建物自体の自己主張が強く、床が傾斜しているため美術品の鑑賞を妨げるという説もあります。グッゲンハイム美術館は、設計から完成までに16年という長い紆余曲折がありました。一説には、前例のない特徴的な建造物に対し、ニューヨーク市当局が建築基準法に触れるために許可を出すのを渋ったからともいわれています。
ライトが、らせん状の美術館にこだわったのは、なぜなのでしょうか。
浮世絵の蒐集家であったライトは、日本文化に影響を受けた建築家でした。1917年、ライトは、帝国ホテルの新館設計のため、6年間、日本に滞在しました。(グッゲンハイム美術館の設計は1943年。完成は1959年)。ライトは、日本滞在中に三匝堂の存在を知り、らせん状の美術館建築のヒントを得たのではないか。浮世絵の蒐集家であれば、当然、葛飾北斎の「富岳三十六景」は知っていたでしょう。そこに描かれた羅漢寺のさざえ堂(三匝堂)の絵から、「らせん状の建物がある」ということは知っていたでしょう。
2016年7月17日。上野の国立西洋美術館が世界文化遺産に登録されました。国立西洋美術館、実は「らせん状の美術館」なのです。完成したのは1959年。奇しくもグッゲンハイム美術館完成と同じ年。設計したのは近代建築の三大巨匠のひとり、ル・コルビジェです。
次回に続く。
前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)
昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。
執事 福田 貴宏
現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)
縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。
執事 堀 研心