執事 堀研心
毎年、3~4体ずつ修理されている羅漢像。これまで修理された羅漢像を紹介していきます。
※羅漢像の修理・修復は、「現状維持修復」といって、これ以上壊れたり、朽ちてしまうことを防止することを目的とした修理・修復です。「しゅうふくしたから新品同様になる」わけではありません。見た目には、どこを修理されたのかわからないかもしれませんが、羅漢像を恒久的に維持していくための修理・修復です。
羅漢堂に安置されている「093 頭陀僧尊者(ずだそうそんじゃ)」は、さいたま市にある「古文化財保存修復研究所」で修理・修復されました。
羅漢坐像093 修理前写真
損傷の状態
◆全体にほこり、汚れ等が堆積・付着していた。
◆矧ぎ目(はぎめ・接着部分のこと)の一部が緩んでいた。特に頭部の矧ぎ目の緩みが顕著であった。
◆矧ぎ目に隙間の生じている部分があった。
◆右足先が欠失していた。
◆ 左右の耳朶(じだ・みみたぶ)が欠失していた。
◆ 表面の一部に剥落(はくらく)が見られた。
◆ 虫喰(むしくい)が確認できる部分があった。
羅漢坐像 093 損傷状況
後補の表面が剥落し像容が損なわれていた。
頭部は前後の矧ぎ目が遊離し右耳朶が欠失していた。
左耳朶も欠失していた。
矧ぎ目に間隙が走っていた。
鉢の中に後補表面が一部残っていた。
全体に後補の泥地が付着し像全体が埃っぽい。
左足先の五指が欠失していた。
体幹部材の矧ぎ目も間隙が生じていた。
像底部の状況
各部材の矧ぎ目に隙間が生じていた。
頭部はすでに遊離し前後二材矧ぎであった。
頭部は体幹部から既に遊離していた。
像に銘記
◆像内背部墨書
「施主/高崎女□/御乳母□/中野/第三百十四/頭陀僧尊者/御祈祷/十八歳/亥ノ□/二歳/戌年男(像内脚部墨書)□□/宗心□
像内墨書銘背板内側
像内墨書銘・膝前材内側。
修理計画
本像は、他の諸像と同様に松雲元慶の作で、僧形の羅漢像である。全体に保存状態は良好であるが、長年の経年変化により、各部材の矧ぎ目(はぎめ)に隙間が生じていた。しかし、全解体の必要性はなかった。部分的には頭部は本体から一旦取り外し、更に前後に解体、再接合を行った。その他、隙間は薄い木を挿入し補強した。
表面は、一部残っていた後補表面(こうほひょうめん・後世に修復された部分)は除去したが、その他は現状表面を清掃及び剥落止めのみにとどめた。
新補(しんほ・新たに付け加える部分)は左右の耳朶(じだ)、左足先のみを行い、裳先の一部の欠失部は行わなかった。
――次回は、修理工程です。
前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)
昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。
執事 福田 貴宏
現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)
縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。
執事 堀 研心