執事 堀研心
●前回からの続き
毎年、3~4体ずつ修理されている羅漢像。これまで修理された羅漢像を紹介していきます。
※羅漢像の修理・修復は、「現状維持修復」といって、壊れたり、朽ちてしまうことを防止することを目的とした修理・修復です。
「しゅうふくしたから新品同様になる」わけではありません。見た目には、どこを修理されたのかわからないかもしれませんが、羅漢像を恒久的に維持していくための修理・修復です。
羅漢堂に安置されている「093 頭陀僧尊者(ずだそうそんじゃ)」は、さいたま市にある「古文化財保存修復研究所」で修理・修復されました。
修理工程(施行内容)
⑤各部材を再度清掃し、必要な構造材を新たに取り付け、接合した。
⑥各矧ぎ目は木屎漆(こくそうるし)で充填したのち、表面を削り合わせ、錆漆(さびうるし)で補彩作業(点描)を行った。
⑦欠失部の新補(しんほ)を行った(左足先、左右の耳朶)。新補部分に古色を施し、周囲との調和を図った。
まとめ
修復は文化審議会審議委員・大正大学教授 副島弘道先生の指導のもと、東京都教育庁、目黒区文化財課を交え、何度も検討会をおこない、技法、修復に使用する材料、新補する部分・形状の確認、修復の方向性を論議し、慎重に進めています。頭陀僧尊者の修復は「修復」を理解していただくのに最適です。修復前と修復後の画像を比べても、「どこを修復したの?どうしてそんなに費用がかかるの?」疑問に思うくらい、大きな変化がみられず、まるで「間違い探し」のようだからです。しかし、「現状を維持する修復」はひじょうに困難で、高度な判断・決断と技術と費用が必要です。(現状維持修復の難しさについては、次回以降、少しずつお伝えします)
ぜひ、羅漢像の修復を通して「文化(財)を未来に伝える(残していく)ことの重要性」について考えるきっかけにして頂けると幸いです。
前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)
昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。
執事 福田 貴宏
現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)
縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。
執事 堀 研心