執事 無垢品宗生
檀信徒の皆さま、前号の挨拶と打って変わって急に寒くなってまいりましたね。世間では「秋がなくて、夏の次はもう冬だ」なんてこともささやかれておりますが、まさにそんな気候を実感しています。皆さんもお風邪などひかれませんように。
そんな秋から冬の気配を感じさせる10月24日~10月31日まで、芝公園にあります浄土宗大本山増上寺様において開廷されました「璽書(じしょ)道場」という道場に入行して参りました。このわずか8日間のうちで日中の最高気温が25度の日もあれば、夜間の最低気温は10度を下回るような日もあり、寝床である大広間に一日ごとにマスク姿が増えていくという異様な状況で、総勢76名の同期と共に過ごしたのでした。
前々号でお伝えした昨年の「法式修練道場」と今回の璽書道場との違いは何かと問われた際にお答えできるのは、「宗による公式な道場」であるという点になります。昨年も厳しい道場であったことは間違いないのですが、今回は携帯電話などの私物は全て没収されたうえでの厳格な道場でした。たかだか8日間とはいえ外界と全く連絡を取れないことは意外と不安なものです。
今回の道場で伝授されたことの詳細は口伝ですのでお伝えすることが出来ないのですが、平たく言えば「正式に一般の方々に布教をして良いよ」という場づくりを学んだ道場でした。また「在家の方々に戒を授ける立場の資格を得た」という表現も出来ます。「授戒」という字面は「戒名を授かる」と受け取られがちですが、実は「仏教徒としての戒を授かる」という意味なのです。「戒」は全ての宗旨、宗派の仏教徒にとって大切なたしなみであり、基本です。そのあたりを連日、座学にて講師の先生方よりご教授頂いてきました。
そして約20年前の加行の時に「よく保つ」と誓った、
1、一切の悪を止(とど)め
2、一切の善を為し
3、一切の衆生に慈悲の心をもって接する
という3つの「基本の戒」を再確認させていただく場ともなったのです。
このように講義中心の道場だったのですが、全く法要を行わなかったわけではありません。修行ですからキチンとヒザが痛くなるまで正座はしましたし、お経も精一杯唱えて参りました。
余談ですが、道場に入る直前まで野球の日本シリーズは広島の2勝でした。このまま日本一になるんだろうなと思いながらスマホの電源を切ったわけですが、ある座学の導入部分で先生が突然「日本シリーズは4勝2敗で日本ハムが日本一になりました。カープファンの方は残念でした」と唐突に仰いました。忘れてたのに…。
「一経入魂」
前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)
昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。
執事 福田 貴宏
現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)
縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。
執事 堀 研心