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体験日記

執事 無垢品宗生

VOL.138  『葛根廟事件の証言』を鑑賞して

もう早くも春の彼岸が近づいてまいりました。ここのところ新型コロナウイルスの話題一色ですが、皆様お変わりありませんでしょうか。遅くなりましたが、令和2年もよろしくお願いいたします。
昨年末、池袋のシネマロサにて一週間の限定公開されていた「劇場版 葛根廟事件の証言」を鑑賞してきたお話です。
お檀家の皆様なら、既にご存じだと思いますが、本堂入口脇には大きな絵がかけられています。周囲に建物もない平原で、大勢の女性と子供が戦車に一方的に襲われているシーン。戦争中のようですが、なぜか抗戦する兵士の姿は描かれていません。

終戦前日の1945年8月14日に事件は起きました。旧満州から引き揚げ中の一団が、ラマ教寺院、葛根廟付近で旧ソ連軍の襲撃に遭い1000人以上が虐殺されたのです。犠牲者のほとんどは民間人の女性と子供で、日本側の兵士はいませんでした。

これが教科書にも載っていない「葛根廟事件」という惨劇のあらましです。生存者も少なく、多くを語られていないことから、耳にしたことがなくても当然かもしれません。
当山では毎年8月14日に遺族会の依頼により、被害者の方々の慰霊法要を執り行っています。その縁もあって田上監督から、自主制作のドキュメンタリー映画を撮りたいと申し入れがあったのは数年前のことでした。
撮影があったことすらすっかり忘れていた昨年末、突然この映画の出演者でもある、事件の生存者の大島満吉さんから招待券が届いたのでした。上映期間が一週間しかなく、モーニングショーのみの一日一回でしたので、どうにか日程を調整して伺いました。私が訪れたのは平日でしたが、座席を半分以上埋める客入り。大島さんからの同封の手紙には「東京での動員実績が今後の上映に影響してくる」という内容が書かれていましたので、勝手に少し安堵しました。
大島さんは、もっともっとたくさんの方々にこの事件のことを知ってもらいたい、と活動されています。今後も各地で上映が続いていくことが、この惨劇を語り継ぐうえで重要になります。気になった方は「葛根廟事件 映画」で検索してみてください。

映画の冒頭、五百羅漢寺での法要の音声が流れます。その後も法要のシーンが幾度か差し込まれますが、今は退職されたK執事の読経が映画館に響き渡るのは、なんとも不思議な感覚でした。

「一経入魂」

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前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)

昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
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