MENU

トップページ > らかんさん広場 > 寺宝探訪記 VOL.136 寺宝探訪記 羅漢像修理報告 097 無相空尊者③

寺宝探訪記

執事 堀研心

VOL.136 寺宝探訪記 羅漢像修理報告 097 無相空尊者③

 毎年、3~4体ずつ修理されている羅漢像。これまで修理された羅漢像を紹介します。
※羅漢像の修理・修復は、「現状維持修復」といって、壊れたり、朽ちてしまうことを防止することを目的とした修理・修復です。
「修復したから新品同様になる」わけではありません。見た目には、どこを修理されたのかわからないかもしれませんが、羅漢像を恒久的に維持していくための修理・修復です。

 羅漢堂に安置されている「097 無相空尊者(むそうくうそんじゃ)」は、さいたま市にある「古文化財保存修復研究所」で修理・修復されました。
 無相空尊者の損傷状態は、たいへん厳しいものでした。崩壊のおそれがあり(すでに崩壊していたとも言える)一刻も早い修復が必要でした。
修復は大規模なもので、前回(らかんさん135号)は「修復工程」の画像を紹介しました。あらためて、修理前と修理後の画像を見比べてください。(らかんさん134号参照)
 この修復は、「現状維持修復」と「再現修復」の、ちょうど真ん中にあたるでしょうか。「現状維持修復」は、文字通り、「現状(壊れている状態)を維持する=壊れている状態は変えずに、それ以上、壊れていくのを防ぐ」ものです。また「再現修復」は、「壊れている状態から、壊れる前の状態に戻す(再現する)」修復。
 この二つの「修復」は、どちらも長所・短所がいくつもあります。現状維持修復の長所のひとつは「現在の状態(オリジナルの状態)を維持できる」こと。短所のひとつは、「壊れている状態を維持するので、さらなる劣化の進行が速く、見栄えが悪い」こと。再現修復の長所のひとつは「当初の状態に近づけることで、劣化の進行を遅らせ、見栄えが良くなる」こと。短所のひとつは「後世の人々の手が加わることで、オリジナルではなくなる可能性がある」こと。
 そこで、修復を担当する技術者は、現状を維持しつつ(オリジナルの状態を損なうことなく)、損傷が激しい部分には新たに手を加え、元の状態に近づけることで見栄えを良くし、なおかつ、手を加えた部分は「よく見れば、オリジナルの部分と新たに手を加えた部分の違いが判別できる」ようにするという難しい条件をクリアしなければなりません。
 どの程度の修復を施すのか、明確な基準や正解があるわけではないので、高度な技術と洞察、判断が求められる、たいへん難しいものです。
 今回の「無相空尊者」の修復は、修復研究所の高度な技術と洞察力、判断力を感じられる、良い例です。ぜひ、皆さん自身の目で確認してみてください。

古色付けされた左足先。

後補材が像容にそぐわないため新たに補った。

新補作業。

新補部分。

新補部分。 

新補部分への補彩作業。

補修部分は木屎漆で充填整形した。

固化した木屎漆の表面を刃物で削り合わせた。

矧ぎ目部分も同様の方法で補修した。

膝前材の木端を希釈した漆溶液を用いて補彩した。

新補部も同様に補彩し全体に違和感のないよう調整した。

■ 羅漢坐像 097 無相空尊者 修理後 ■

正面

背面

右側面

左側面

連載記事アーカイブ

  • ウグイス谷から
  • 仏教手習い草紙
  • 体験日記 
  • 寺宝探訪記

ウグイス谷から 住職 佐山拓郎

住職 佐山拓郎(平成26年 普山 第40世)

昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。

仏教手習い草紙 執事 福田貴宏

執事 福田 貴宏

体験日記 執事 無垢品宗生

執事 無垢品 宗生

縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
今年の1月には彼らが司会を務めるラジオ番組にも出演する。

寺宝探訪記 執事 堀研心

執事 堀 研心