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寺宝探訪記

執事 堀研心

VOL.133 寺宝探訪記 羅漢像修理報告 093頭陀僧尊者執事③

●前回からの続き

毎年、3~4体ずつ修理されている羅漢像。これまで修理された羅漢像を紹介していきます。

※羅漢像の修理・修復は、「現状維持修復」といって、壊れたり、朽ちてしまうことを防止することを目的とした修理・修復です。

「しゅうふくしたから新品同様になる」わけではありません。見た目には、どこを修理されたのかわからないかもしれませんが、羅漢像を恒久的に維持していくための修理・修復です。

 

羅漢堂に安置されている「093 頭陀僧尊者(ずだそうそんじゃ)」は、さいたま市にある「古文化財保存修復研究所」で修理・修復されました。

 

修理工程(施行内容)

⑤各部材を再度清掃し、必要な構造材を新たに取り付け、接合した。

⑥各矧ぎ目は木屎漆(こくそうるし)で充填したのち、表面を削り合わせ、錆漆(さびうるし)で補彩作業(点描)を行った。

接合作業

 

隙間には板材を挿入して補修

 

首の欠失部の補修

 

隙間の表面は木屎漆で整形

 

木屎漆による補修

 

 

⑦欠失部の新補(しんほ)を行った(左足先、左右の耳朶)。新補部分に古色を施し、周囲との調和を図った。

 

 

新補する部分は粘土で試作し、検討した

 

試作を参考に檜材で新補した

 

木地固め

 

新補部は黒漆で古色付けを行った

 

まとめ

修復は文化審議会審議委員・大正大学教授 副島弘道先生の指導のもと、東京都教育庁、目黒区文化財課を交え、何度も検討会をおこない、技法、修復に使用する材料、新補する部分・形状の確認、修復の方向性を論議し、慎重に進めています。頭陀僧尊者の修復は「修復」を理解していただくのに最適です。修復前と修復後の画像を比べても、「どこを修復したの?どうしてそんなに費用がかかるの?」疑問に思うくらい、大きな変化がみられず、まるで「間違い探し」のようだからです。しかし、「現状を維持する修復」はひじょうに困難で、高度な判断・決断と技術と費用が必要です。(現状維持修復の難しさについては、次回以降、少しずつお伝えします)

ぜひ、羅漢像の修復を通して「文化(財)を未来に伝える(残していく)ことの重要性」について考えるきっかけにして頂けると幸いです。

 

修理前(正面) : 全体に剥離、汚れがわかる

 

修理後(正面)

 

 

 

修理前(右側面): 頭部の剥離、足先が無いことがわかる

 

修理後(右側面)

 

 

 

修理前(背面): 首が落ちこみ、左に傾いている

 

修理後(背面)

 

 

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ウグイス谷から 住職 佐山拓郎

前住職 佐山拓郎(第40世 平成26年~令和3年)

昭和のある年の秋彼岸、東京下町の小さなお寺で生まれる。
前職はサラリーマン。縁あって目黒の羅漢寺の住職となる。

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執事 福田 貴宏

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現住職 無垢品 宗生(第40世 令和3年 晋山)

縁を大切にしたいと人気声優と手紙のやりとりを続け、
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寺宝探訪記 執事 堀研心

執事 堀 研心