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らかんさんとは?

羅漢堂

 人の心の迷い、悩み、苦しみをひきおこす原因となる心の垢や精神の汚れのことを、仏教では煩悩といいます。修行してこの煩悩を拭い去り、清らかな人格をつくりあげ、人間として本当に価値のある人生を生きぬいてゆくための真実の智慧を完成した聖者を、昔からインドでは「アラハン」とよびました。人びとからの供養をうけるにふさわしい聖者という意味です。中国の仏教者は「アラハン」の発音をそのまま活かして「阿羅漢」と表現しました。使い慣れるうちに「阿」がとれて「羅漢」というようになったのです。これが「らかんさん」の語源です。

羅漢堂中

 悟りをひらいたお釈迦さまは、いわば「らかんさん」の第一号。しかしお釈迦さまには「仏陀」とか「如来」などというような尊い呼び方がいろいろあったために、「羅漢」というとお釈迦さまのお弟子のことを意味するようになりました。いいかえれば「らかんさん」はお坊さんの第一期生、遥かな大先輩ということになります。
 お釈迦さまと同じ時代のインドに生まれ、縁あってお釈迦さまに出会ってその弟子となり、説法を我が耳で聴き、教えのとおりに修行に励み、とうとう煩悩を断ち切って聖者となり、人びとの尊敬をうけたのが「らかんさん」です。
 「らかんさん」は、ほかの多くの仏さまとちがって生身の人間です。実在していた人なのです。

らかんさん写真1

 私たちは昔から、仏さまのお名前に「さん」をつけて身近に呼び、親しんできました。お釈迦さん、阿弥陀さん、お薬師さん、観音さん、お地蔵さん、お不動さん……。そのような仏さまのなかでも、らかんさんは、また一段と親しみをもって迎えられました。
 皆んなで輪になって座り、それぞれが思い思いの身振りをして、

  ラカンサンがそろったらまわそじゃないか
              ヨイヤサノヨイヤサ

と歌いながら、順繰りに隣の人の真似をしてゆく遊びをご存じですか。子供のころ、私も遊んだことがある、と懐かしく思いだされる方もあるでしょう。この「羅漢まわし」は江戸時代は大人の酒席のお遊びだったといわれています。このころ、らかんさんはお寺の本堂を抜け出して、お座敷にまで入りこんでいたのです。

らかんさん写真2

 何故そんなに親しまれていたのでしょうか。それは、ほかの仏さまとちがってらかんさんは私たちの同じ生身の人間であったというところに秘密があります。
 らかんさんはお釈迦さまのお弟子さまだった人たちです。歴史上に実在していた人です。修行を積んでとうとう聖者の位に登りつめたひとです。だから、らかんさんは、ひとり山の奥にこもって禅をくんでいる仙人ように気難しい、とっつきにくいイメージがもともとあったのです。しかし江戸時代にはいって五百羅漢さんが登場するようになって、イメージがガラリとかわりました。
 ひとりひとり顔のちがったらかんさんがならんでいるなかに、お参りの人びとは亡き人の面影によく似たらかんさんを見つけだして、久し振りに再会したような感激をおぼえたのです。写真のなかった当時、羅漢堂は懐かしい人の面影を偲ぶことができる有難い場所になったのです。瞼の父に会いにきて、小さな手をあわせて一生懸命に祈っていた幼な児もいたはずです。
 そんなところが人気を呼んで全国各所に五百羅漢像が造立されました。羅漢堂にいならぶ五百羅漢さんは、人びとにとって懐かしい自分の肉親の姿であり、恋人の姿だったのです。

 らかん像の修復

 五百羅漢像は長い年月の間に損傷、欠損が発生、現在もなお進行しています。そのため、良好な状態で後世に伝えていくことを目的とした修復を行っています。といっても新品のように再現する修復ではなく、現状維持の修復を行っています。松雲禅師が作ったオリジナル部分を最大限残して、すき間やゆるんだ箇所、欠けたものを部分的に直してゆく保存修復です。
 そのため仏像がピカピカになって帰ってくることはありません。けれども時間経過も仏像の歴史のひとつと考え、なにより松雲禅師の写実性の豊かさ、表現内容の深さ、格調の高さをよみがえらせてくれます。毎年少しずつではありますが修復を行ってゆきたいと考えています。
 しかし修復にはお金がかかります。年間約300~400万円です。皆さまのご支援ご協力をお願い申し上げます。
 なお今まで寄進していただいた方には、感謝の意を表しますとともに、聖宝殿の芳名板にお名前を掲げさせております。


年度 文化財名 工期 修復業者
平成10年度  松雲禅師倚像
(途中で象先禅師像と判明)
約7ヶ月 明古堂
平成11年度  鉄眼禅師倚像 約7ヶ月 日本修復院
平成12年度  羅漢坐像2体(028、057) 約7ヶ月 日本修復院
平成13年度  羅漢坐像2体(083、096) 約8ヶ月 日本修復院
平成14年度  文殊師利菩薩立像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成15年度  地蔵菩薩半跏坐像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成16年度  普賢菩薩像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成17年度  白衣観世音菩薩半跏踏下像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成18年度  舎利弗立像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成19年度  十一面観音像、白沢象 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成20年度  目連像、須菩提像約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成21年度  迦旃延像、達磨像 約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成22年度  羅漢坐像5躯
(蘇頻陀、147、157、174、197)
約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成23年度  羅漢坐像5躯
(201、208、210、231、257)
約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成24年度  優婆離立像、羅漢坐像3躯
(004、030、050)
約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成25年度  羅漢坐像5躯
(093、097、101、169、192)
約9ヶ月 古文化財保存修復研究所
平成26年度  羅漢坐像5躯
(195、200、203、211、217)
約9ヶ月 明古堂
平成27年度  羅漢坐像5躯
(225、239、242、254、267)
約9ヶ月 明古堂
平成28年度  羅漢坐像5躯
(270、278、281、282、284)
約9ヶ月 予定


仏教手習い草紙

 当山発行「らかんさん会報」に掲載している、福田貴宏執事の「仏教手習い草紙」を紹介しています。仏教語をわかりやすく解説しています。
 過去のことばは、「バックナンバー」(新しいタブが開きます)からどうぞ

 Vol,118  悪魔(あくま)

 仏教経典では、私たち人間は「欲界」と呼ばれる、欲にとらわれた生き物が住む世界に存在していることになっています。欲界には六道と呼ばれる地獄、餓鬼、畜生、修羅、人間、それと六つの天が属し、そのうちのひとつ「他化自在天(たけじざいてん・別名を第六天)」は欲界全体を支配している天です。

 さて、その天には1人の王がいます。名前を「マーラ・パーピーヤス」といいます。サンスクリット語で、マーラは「いのちを奪うもの」、パーピーヤスは「より以上悪いもの」という意味です。実際にいのちを奪うわけではありませんが、人が得た快楽を、自由に自分の快楽とすることができる、という力をもっています。だから王は部下や軍団、時には自分の家族を使ってまで、人が快楽を得られるように誘惑し続けてきます。その誘惑はさまざまで、色気や食い気、眠気、嫌悪、怠惰、恐怖、疑惑、偽善、名声、富、慢心などなどです。仏教ではこの誘惑を「煩悩」と呼びます。

 煩悩は、すべての悪の根源です。煩悩を滅するため、仏教では修行をするのですが、所詮私たちは欲界の生き物、煩悩が無くなることはありません。だけどもし欲のまま煩悩を受け入れてしまうと、そこは快楽と悪の世界、一度味わうとそれでは物足りなくなっていき、またさらに深みにはまってゆく、最後に待っているのは身の破滅です。名前通り「いのちを奪うもの、より以上悪いもの」です。

 話は変わって、経典はもともとサンスクリット語などで書かれています。中国に経典が入ってくると、中国語に翻訳され、漢字の表記に変わります。個人名も当て字ですが漢字に変換されます。マーラ・パーピーヤスを訳すとき、翻訳家は考えました。

  「こいつは悪の根源である煩悩を作り出し、私たちの身を破滅へと導く悪の大王である。
   普通の字ではこの恐怖は伝わらないであろう。」

 そこで、今まで存在しなかった「魔」という字を新しく作り出し、マーラを「魔羅」と表記したのです。そして魔、悪魔、天魔、あるいは第六天魔王、パーピーヤスは「波旬」とし「魔波旬」などと訳されていったのです。これが仏教における悪魔の正体です。

 西洋における悪魔では、サタンやデビルなどが有名ですが、結局は仏教の悪魔と同じです。心の弱さや煩悩などの誘惑を、あたかも外部から襲ってくるよう見せるため、悪魔という生物を造り出しているにすぎません。
 私たちは知っています。悪魔は自分の中に住んでいることを。
 そしてもうひとつ、私たちは知っています。仏さまは自分の中に住んでいることを。


Vol, 題 名 Vol, 題 名
120 100 和顔愛語
119 99 散華
118 98 不動明王
117 福田 97 正念場
116 禅宗3 96 菩提樹
115 禅宗2 95 鎮護国家
114 禅宗1 94 初転法輪
113 喜捨 93 七難
112 遍路 92 法爾自然
111 仁王 91 不退転
110 × 休 載 90
109 護摩 89
108 舎利 88
107 天竺 87
106 写経 86
105 比丘 85
104 甘露 84
103 血脈 83
103 南都六宗 82
101 大師 81

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